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コラム 「 とかちの窓から 」Column

(2010年4月20日配信)

第68回 『ニキビと野菜ジュース』について

 こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。

 3月は数年振りで結婚披露宴に出席しました。一ヶ月に2件というのは初めてです。一つはホテルでのオーソドックスな披露宴。もう一つは、レストランウエディングでした。
 どちらの形も、しばらくお呼ばれしていない内に、大きく変化していました。

 地味婚が流行っているのかと思っていたら、一方では、新婦を徹底的にお姫様状態にもっていく動きもあるようです。
 思い出の写真を数十枚、プロのMC入りで最近のヒット曲をバックに、大スクリーンで見せると、新婦の気分はちょっとした女優さんですね。

 お色直しやケーキ入刀、更にはファーストバイトなどの場面で、カメラ付き携帯で何十人もの人に手を振りバシャバシャされるのは、『海老蔵・麻央さん』の記者会見も顔負けです。
 一生に一度とはいえ、お二人とも新婦は本当に満足げで、幸せそうでした。新郎も意外と嬉しそうなのも共通していましたね。

 『ファーストバイト』というのは全く知りませんでした。ケーキカットの後で、カットしたウエディングケーキの一切れを、新郎新婦が互いに食べさせあう演出で、欧米で古くから行われている習慣が伝わったものだそうです。
 新郎から新婦への一口は「一生食べるものに困らせないから」、新婦から新郎への一口は「一生おいしいものを作ってあげる」との意味が込められているそうです。

 そうそう、ニキビ改善には、その食生活の工夫、改善も大切ですね。今回はこの『ニキビ治療』と食生活、特に最近身近な存在となっている、『野菜ジュース』について考えてみました。

 ニキビの治療には、お薬の力(=テクニカル/技能面)ばかりでなく、根気よく治療に取り組む力(=メンタル/精神面)も大切です。
 このコラムが、その両方をうまくケアしていければ最高だなと思いつつ、自分自身が一歩でも前に進むつもりで、毎月お届けさせていただいています。

 とかち美白研究所では、VCローション等を購入されている方に会報を毎月発行しております。

 そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)』というものを載せています。
(思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)

ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)

今日から私は以下の4つを良く守り、
ニキビ改善を目指すことに決めました!

  • (1)爪を切って手は下に置くことに決めました。
  • (2)髪型は適切にアレンジすることに決めました。
  • (3)規則正しい生活を送ることに決めました。
  • (4)お肌はしっとり潤いを保つことに決めました。

 これは私が皮膚科診療を20年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。

 ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々です。このコラムでは、第15回までは『ニキビ治療の4ヶ条』を系統立てて解説してきました。

 第16回からは『落ち穂拾い』と題して、『ニキビ治療の4ヶ条』を『基本中の基本(中核)』と考え、日々気付いたニキビ治療に関連したこと一つ(今まで取り上げていなかったが重要なことなど= 落ち穂 )にフォーカスをあて(= 拾い )、お話させていただいています。

 最近、製薬メーカー発行のレポート(*)を眺めていたら、食事とニキビのことが触れられていました。
(*)MARUHODERMAREPORTVol.07

 二人のアメリカの学会の大御所と思われる先生の意見が出ていました。列挙してみました。

 米国ざ瘡・酒さ学会の前会長のHilaryBaldwin先生いわく、

『特定の食品がニキビに関係しているかどうかは議論のあるところです』
『ある研究グループは、脱脂粉乳製品の過剰摂取はニキビの悪化と関連しているとしています』
『高血糖食(その多くは炭水化物やジャンクフード)が、ニキビを悪化させると考える専門家もいます。炭水化物は体内のインスリン産生を促進させるため、インスリン過剰とニキビの間には理論的に相関があります』
『牛乳と高炭水化物食の過剰摂取を避けることが有効であるとする研究があります』

 米国ざ瘡・酒さ学会の共同創設者で元会長のGuyWebster先生いわく

『食事がニキビに少なからず関与していることは明らかです。しかし、食事のどの内容がニキビに影響を与えているかについては明らかではありません』
『牛乳と炭水化物について、ニキビと関連を示す証拠は弱いです。現時点で、患者に何を伝えるべきかを判断するのは困難です』

 日本の皮膚科の林伸和先生は、前記2名の先生の発言を総括すると、
『食事に関しては、脱脂粉乳の過剰摂取や高血糖食とニキビとの関連について述べた論文に触れているが、これらのエビデンスがまだ不十分であるため、患者からの質問に対して、「まだわからない」と答えておくのが良い』
ということになると書かれています。

 う~む、はっきりしませんね。

 私も、第46回(2008年6月23日配信)と第47回(同年6月23日配信)などのコラムで『低GIダイエットとニキビ治療』と題して、高血糖食とニキビについて取り上げています。その他、トランス脂肪酸や玄米食についても取り上げています。
 もう一度再読いただければ幸いです。

 さて、今回の『ニキビ』と『野菜ジュース』についてです。

 私が、ニキビの患者さんを診察していて、特に改善しにくい患者さんで顕著に感じるのが、何ともいえない『サビついた感じ』なのです。
 何か酸化している感じです。肌の色やつやも悪く、年齢より老けて見えます。

 好きな食べ物は?と質問すると、『ファーストフード、揚げ物、お菓子』。
 嫌いな食べ物は?と質問すると、『野菜。果物は皮をむくのが面倒なので食べません』ということが多いですね。

 果物は、次回以降にゆずることにして、私は野菜をきちんと摂って、普段の食生活を改善させることが、ニキビ改善につながると思っています。
 野菜全般のことを書こうかと考えて調べていた所、カバーする範囲が膨大になってしまいました。今回は野菜ジュースに絞って(笑)、主に私が感じた4つの疑問点についてお話させていただきます。

 野菜はビタミン、ミネラル、食物繊維を供給する大切な食品です。特に、緑黄色野菜はニキビに良いとされる、ビタミンCやビタミンB群、ビタミンAなどを豊富に含んでいるので、積極的にとりたいものです。

 厚生労働省は『健康日本21』の中で、1日の野菜摂取量の目標を350g以上としています。
(詳しくは、http://www.kenkounippon21.gr.jp/

(『健康日本21』とは、厚生労働省が推進する健康増進運動です。これから超高齢化社会を迎える日本では、がんや心臓病、糖尿病などの『生活習慣病』も含めた病気の早期発見や治療だけでなく、健康増進、生活の質の向上が重要であり、痴呆や寝たきりにならず生活できる期間(健康寿命)を伸ばすため、個人と社会が力を合わせる必要があるとして、その指針が示されています。)

 『ニキビはお肌の生活習慣病』と考える、私としては無視できません。

 効率的に多くの野菜の栄養素が取れるとして、野菜ジュースが人気です。私自身も、野菜ジュースを毎日愛飲しています。
 野菜ジュースを勧めたニキビ患者さんが、改善することがあることも事実ですが(例:第44回のコラム参照)、本当にお勧めしても大丈夫なものなのか、検証が必要と考え、特に気になることを調べてみました。

疑問1.
『本当にパッケージにある分量の野菜や栄養が入っていますか?』

(答と解説)
『相当する野菜量を使っているが、栄養成分に関しては生野菜350g(うち緑黄色野菜120g)の主な栄養成分に換算した自主基準を満たしている』(大手メーカー)

 ところが、2007年10月12日の朝日新聞の朝刊ではこんな記事が。

『1本で1日分の野菜を使用』などと表示された野菜ジュース類の多くは、「厚生労働省が推奨する1日の野菜摂取量350g」を下回る量の栄養素しか含んでいないことが、名古屋市消費生活センターの実施した成分分析でわかった。「飲むだけで栄養素を十分摂取できると受け取れる表示には問題がある」として、消費者団体の主婦連合会は公正取引委員会と厚労省に実態調査をするよう申し入れた。(本山秀樹)

「野菜ジュースの栄養は1日分でなく、小鉢1皿程度と考えたほうがよいだろう」(調査をした名古屋市市消費生活センターのコメント)

 また、結果をみるとビタミンCやカルシウムの含有量が全体的に不足しているようです。
 私は小鉢1皿でも、実際に毎日摂るのは意外と難しいと考えているため、野菜ジュースを飲みつつ、その他の食事を工夫して、上手に取り入れて行くことを考えています。

疑問2.『野菜の産地はどこですか?』

(答と解説)
『全てを国内の野菜で賄えないため、農薬の種類や使用頻度など自社基準を作りクリアした海外の農家から調達している』(大手メーカー)

 包装にあるQRコードやHPなどで産地や原料の調達情報が確認できるものが多いです。ちなみに私の愛飲しているものは海外のものが多く、ちょっと驚きました。
 しかしながら、以下の疑問4.で示す通り、国産野菜が全てにおいて良い訳ではないようです。難しいですね。

疑問3.『ジュースに加工して失われる成分は?その対策は?』

(答と解説)

『生野菜は搾って加熱するなど加工により、食物繊維が減少したり、栄養のバランスが変化します。搾る過程で減少してしまう、ビタミンCやカルシウムなどを加えているものもあります』

 一部の銘柄では、不足気味の食物繊維やビタミン、ミネラル等を添加してあり、原材料には表示されています。でもやっぱりこれだけでは不足のようです。

疑問4.『ジュースに含まれる硝酸塩はどれくらいですか?』

(答と解説)
 硝酸塩は、野菜に多く含まれることが知られています。食品添加物などに利用され通常の摂取量では問題ありませんが、体内で亜硝酸イオンに変わると発ガン物質に変化すると言われており、大量摂取は控えるべきものです。

 種々のデーターを総合すると、野菜ジュースに含まれる程度の硝酸塩ならば問題にはならないようです。でも、1日に何本も飲んでしまうと良くないようです。
 1日1本というのはこんな裏があるのかも知れませんね。メーカーによっては、硝酸塩に気をつけて商品開発を行っている所もあるようです。

 それから、ちょっとまめ知識です。

 ヨーロッパの野菜には硝酸塩の含有基準が決められていて、化学肥料や、堆肥をふんだんに使った有機野菜は硝酸塩がとても多くなるため、販売することが出来なくなってしまうそうです。
 でも日本の農業は化学肥料を使うことが多く、硝酸塩量が多いとされています。野菜ジュースはトマトやにんじんが主原料の物を選ぶと、減量対策になるそうです。
 頭に入れておきたい知識ですね。

 最近のニュースによると、天候不順で野菜が高騰しているそうです。

 野菜サラダや野菜料理を自分で作るのは、手間とそれなりの費用がかかります。コンビニの野菜サラダは100円前後からありますが、野菜も量や種類が小鉢一皿としては少し寂しい気がします。  野菜ジュースはその手軽さと価格で、野菜摂りの優秀選手と言っても良いと思います。

 特にニキビに悩める現代人にとっては、『確実に野菜摂取が見込めるヒットメーカー』=『野菜摂取のイチロー選手』といっても良い存在だと私は考えています。
 野菜ジュースで野菜不足をカバーし、その他の食事を工夫することでニキビが改善する。これは大切なことです。

 今回のポイントは以下の通りです。

【今回の4決め!落ち穂拾い】 「落ち穂 その52」

『ニキビと野菜ジュース』について

 
  • •野菜はビタミン、ミネラル、食物繊維を供給する大切な食品です。特に緑黄色野菜はニキビに良いとされる、ビタミンCやビタミンB群、ビタミンAなどを豊富に含みます。
  •  
  • •厚生労働省は『健康日本21』の中で、1日の野菜摂取量の目標を350g以上としています。
  •  
  • •効率的に多くの野菜の栄養素が取れるとして、野菜ジュースが人気です。私も、野菜ジュースを愛飲しています。
  •   
  • •野菜ジュースを勧めたニキビ患者さんが、改善することもあります(例:第44回のコラム参照)。
  •  
  • •本当にお勧めしても大丈夫なものなのか、検証が必要と考え、特に気になる4つの疑問点について調べてみました。
  •  
  • •疑問1.『表示通りの分量の野菜や栄養が入っていますか?』
    (答)『相当する野菜量が入っているが、栄養は小鉢1皿程度』
  •  
  • •疑問2.『野菜の産地はどこですか?』
    (答)『全てを国内の野菜で賄えません。自社基準をクリアした海外の農家からも調達しています』
  •  
  • •疑問3.『ジュースに加工して失われる成分とその対策は?』
    (答)『生野菜は加工により、食物繊維が減少し、ビタミンCやカルシウムなどが減少します。一部の銘柄では、不足気味の成分を添加しています』
  •  
  • •疑問4.『ジュースに含まれる硝酸塩はどれくらいですか?』
    (答)『野菜に多く含まれる硝酸塩は、通常量では問題ないが、体内で亜硝酸イオンに変わると発ガン物質に変化し、大量摂取は控えるべきです。野菜ジュースに含まれる程度では問題ありません』
  •  
  • •野菜ジュースは手軽で価格も安定しています。
  •  
  • •野菜不足の現代人、特にニキビでお悩みの方にとっては、『確実に野菜摂取が見込めるヒットメーカー』=『野菜摂取のイチロー選手』といっても良い存在です。
  •  
  • •野菜ジュースで野菜不足をカバーし、その他の食事を工夫することでニキビが改善する。これは大切なことです。
 

 気づいたらもう4月も後半。あっと言う間にゴールデンウィークですね。カレンダーの並びも最高な今年。楽しみな計画を立てている方も多いと思います。
 仕事も勉強も、もうひと頑張りですね。

 次回は、引き続き『ニキビと野菜の摂り方の工夫』について考えてみたいと思います。

 それでは。

おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム)
(昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。
平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。
平成14年とかち美白研究所開所。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

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