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コラム 「 とかちの窓から 」Column

(2011年7月20日配信)

第83回 『十味敗毒湯は特に女性にオススメな漢方薬です!』

 こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。

 昔から高い所に上るのが好きでした。実家の屋根に上がって遠くを眺めたり、年に数回、少し離れた高台にある公園に自転車で行き、小1時間程、帯広の街を飽きずに眺めたりしていました。

 講演会があって、札幌のホテルに宿泊しました。展望階から札幌のビル街を眺めると、多くの変化に気づきました。
 老舗の百貨店だった赤レンガの建物は、解体中です。また、近くのビルで屋上の防水工事が大掛かりに行われています。屋上に祠(ほこら)があるビルも発見しました。
 昔はよく見えた母校の大学病院の建物は、ビルの影に隠れ今ではちょっと顔を見せるだけになってしまいました。

 普段ばたばたした生活を送っていると、小さなことにこだわり、大きな変化に気づかないことがあります。  時々、高い所に立ってみましょう。悩んでいたニキビが実は大したことではないことがわかったり、自分が思っている以上にニキビが改善していたことに気づくことも。

 夏真っ盛り。今年の夏は『変化』を意識して、ニキビ治療に取り組みましょう。『小さな変化』が後々、大きなニキビ改善につながります。

 ニキビの治療には、お薬の力(=テクニカル/技能面)ばかりでなく、根気よく治療に取り組む力(=メンタル/精神面)も大切です。
 このコラムが、その両方をうまくケアしていければ最高だなと思いつつ、自分自身が一歩でも前に進むつもりで、毎月お届けさせていただいています。

 とかち美白研究所では、VCローション等を購入されている方に会報を毎月発行しております。

 そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)』というものを載せています。
(思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)

ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)

今日から私は以下の4つを良く守り、
ニキビ改善を目指すことに決めました!

  • (1)爪を切って手は下に置くことに決めました。
  • (2)髪型は適切にアレンジすることに決めました。
  • (3)規則正しい生活を送ることに決めました。
  • (4)お肌はしっとり潤いを保つことに決めました。

 これは私が皮膚科診療を21年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。

 ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々です。このコラムでは、第15回までは『ニキビ治療の4ヶ条』を系統立てて解説してきました。

 第16回からは『落ち穂拾い』と題して、『ニキビ治療の4ヶ条』を『基本中の基本(中核)』と考え、日々気付いたニキビ治療に関連したこと一つ(今まで取り上げていなかったが重要なことなど= 落ち穂 )にフォーカスをあて(= 拾い )、お話させていただいています。

 前回は、震災後、ストレスでニキビが悪化している患者さんが目立つため、『ニキビでお悩みの方へ 3.11後 3つのストレスケア』と題して、3つのストレス解消法について考えました。
 今回は、第64回のコラムで取り上げた『十味敗毒湯』について、最近新しい知見が発表されましたので、これについて考えたいと思います。

 『十味敗毒湯』は、江戸時代、世界で初めて乳癌の麻酔手術を行った、当時の世界的な医学者、華岡青洲(はなおかせいしゅう)によって創られた、「瘍科方筌(ようかほうせん)」に収載されている漢方薬です。
 できものや急性で発赤し腫れて痛みのある化膿性の皮膚疾患、湿疹、じんましんなどかゆみや熱をもったり化膿するおそれのある皮膚疾患に使われています。
(適応:化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんま疹、水虫)

 『十味敗毒湯』は出典の違いから、桜皮(ヤマザクラの樹皮)配合と、くぬぎ(クヌギの樹皮)配合のものがあり、特に桜皮が配合されている『十味敗毒湯』は、女性のニキビに有用性が高いとの報告があります。
(私は桜皮配合のものを処方しています。)

 『十味敗毒湯』がニキビに効果を現すメカニズムとしては、配合されている荊芥、甘草などの生薬が持つアクネ菌に対する抗菌作用が主と考えられてきました。
 最近の研究では、桜皮を配合する『十味敗毒湯』が、皮膚のエストロゲン分泌を促進してニキビが改善することがわかりました。

 エストロゲン?? よく聞くけど、これってどんなものなのでしょうか?

 きちんと理解するとニキビ治療に対する考えも深まります。ニキビと性ホルモンについて簡単におさらいしましょう。

 思春期を迎えた10代のほとんどの人はニキビに悩みます。原因は、この時期(第二次性徴期)に、性ホルモンのバランスが大きく乱れるためです。
 性ホルモンには、アンドロゲンに代表される男性ホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモンなどの女性ホルモンがあります。

 第二次性徴期の後期を迎えると、女性ホルモンに比べ、男性ホルモンの分泌が盛んになります。そして、この男性ホルモンの働きによって、ニキビが発生します。
 皮脂を分泌する皮脂腺が増大し、皮脂の分泌量も多くなり、皮膚がオイリーな感じになります。皮脂が毛穴に詰まると、にきび第1段階のコメドが形成されます。

 また、男性ホルモンにより、皮膚の古い細胞がはがれにくくなり、厚くたまってしまう角化異常も起こります。

 男性ホルモンの分泌が盛んになることが、ニキビ発生につながります。男性のほうが男性ホルモンは多いので、男性のほうが重いニキビになることが多いのです。

 女性の場合は、月経の前後で性ホルモンの分泌バランスが大きく変化します。黄体ホルモンは男性ホルモンと似たような働きがあり、黄体ホルモンが多く分泌されると、皮脂の分泌量も増え、ニキビができやすくなります。
 一方、女性ホルモンであるエストロゲンは、男性ホルモンをブロックする方向に働き、ニキビの増加・悪化を抑えます。

 ということは、ニキビ改善のためには、男性ホルモンを減らし、女性ホルモンでは黄体ホルモンも減らすことが有効と考えられます。
 また、女性ホルモンのエストロゲンを増やすことも有効です。

 冒頭でお話しした通り、桜皮を配合する『十味敗毒湯』が、皮膚でエストロゲン分泌を促進して、ニキビ改善につながることは、この性ホルモンのメカニズムで裏付けられます。

 ちょっと専門的な言い方をすると、桜皮を配合する『十味敗毒湯』が、皮膚でエストロゲン分泌を促進すると、全体としてエストロゲンが増加し、男性ホルモンと拮抗するため(=競い合いが起こり男性ホルモンの作用が弱まるため)、ニキビは改善するわけです。

 また、皮膚でエストロゲン分泌が促進されても、その受け皿となる受容体(レセプター)がないと、エストロゲン作用は発揮できません。
 エストロゲンの受容体は、男性より女性に多く存在します。
 つまり、エストロゲンが分泌されても、男性はエストロゲン作用が小さくあらわれ、女性は作用が大きくでやすいのです。

 確かに『十味敗毒湯』を使うと、最初は男女差があまり感じられませんでしたが、対象を少し広げて使ってみると、女性の方がより効果が上がっているのが実感されます。『十味敗毒湯』は特に女性にオススメな漢方薬です。
 医学には経験と科学的根拠が必要なことを痛感しました。ニキビ治療は奥が深いですね。

 今回のポイントは以下の通りです。

 

【今回の4決め!落ち穂拾い】 「落ち穂 その67」

『十味敗毒湯は特に女性にオススメな漢方薬です!』

 
  • •第64回のコラムで取り上げた『十味敗毒湯』について、最近新しい知見が発表されました。
  •  
  • •『十味敗毒湯』は、出典の違いから、桜皮(ヤマザクラの樹皮)配合と、くぬぎ(クヌギの樹皮)配合のものがあります。
  •  
  • •特に桜皮が配合されている『十味敗毒湯』は、女性のニキビに有用性が高いとの報告があります。(私は桜皮配合のものを処方しています。)
  •  
  • •『十味敗毒湯』がニキビに効果を現すメカニズムとしては、配合されている荊芥、甘草などの生薬が持つアクネ菌に対する抗菌作用が主と考えられてきました。
  • •最近の研究では、桜皮を配合する『十味敗毒湯』が、皮膚のエストロゲン分泌を促進してニキビが改善することがわかりました。
  •  
  • •女性ホルモンであるエストロゲンは、男性ホルモンをブロックする方向に働き、ニキビの増加・悪化を抑えます。
  •  
  • •皮膚でエストロゲン分泌が促進されても、その受け皿となる受容体(レセプター)がないと、エストロゲン作用は発揮できません。
  •  
  • •エストロゲンの受容体は、男性より女性に多く存在するため、男性はエストロゲン作用が小さくあらわれ、女性は作用が大きくでやすくなります。
  •  
  • •確かに『十味敗毒湯』を使うと、最初は男女差があまり感じられませんでしたが、対象を少し広げて使ってみると、女性の方がより効果が上がっているのが実感されます。
  •   
  • •『十味敗毒湯』は女性に特にオススメな漢方薬です。
  

 今年の十勝の夏は暑いです。6月からエンジンがかかっています。そうそうアリさんも大発生しています。
 8年前の十勝沖地震の時も、こんな感じだったような気がします。暑さに油断しがちな毎日ですが、少し気を引き締めたいと思います。

 次回は、今回取り上げたホルモンと関連して、エストロゲン作用を持つ食べ物について考えたいと思います。

 それでは。

おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム)
(昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。
平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。
平成14年とかち美白研究所開所。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

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